運動音痴のJサポがフットサルに挑戦して選手の気持ちを体感してみた

2020/08/09 Writer:リセル

※画像はイメージです。実際に使用した練習場ではありません。

 私はサッカーを観るのが大好きで、これまで数え切れないほどの試合を観戦している。

 ただ、実際にサッカーをプレーしたことは一度もない。スポーツが大の苦手で学生時代の体育の時間、特にチームスポーツではいつも周りの足を引っ張ってきた。そういう経緯もあって、学校を卒業してからはスポーツに関することには極力距離を置いてきた。

 しかし、いつの間にかサッカー観戦が好きになり、試合を何度も見ていくうちに「私も実際にプレーしてみたい」と思うようになった。自分のポジションや役割を意識しつつもピッチを縦横無尽に駆け回る自由度の高さ、パスが通って決定機に繋がった時、または自分でゴールを決めた時の喜び。それらを自分の体で感じてみたくなったのだ。

 また、試合中選手達はどのような気持ちでプレーしているのかも体感してみたくなった。試合中に思わず「走れ!」「決めろ!」と言ってしまいたくなるが、走ることや決めきることがどれだけ大変なことなのか、頭で分かっていても実際に体験してみればまた違った目線でサッカーが観られるかもしれないと思ったのだ。

 そして今回、職場の同僚が入っているフットサルチームの練習に参加させてもらえることになった。「がっつり練習をして試合に勝とう」という雰囲気ではなく「みんなで楽しもう」という感じらしいので、当日は運動音痴の不安とわくわくした気持ちで練習場にむかった。

 

 

キックの難しさを思い知る

 参加者が集まり各自ストレッチを行った後、パス回し開始。

 一回足の裏でボールを止めて相手に向けて蹴るところから始まったのだが、止めることは出来ても意図したスピード・方向にボールが飛ばない。浮き球になったり、相手の足元まで飛ばずに途中で力なく止まってしまったりと、ボールを全くコントロールできず、あんなに簡単そうにボールを操るプロサッカー選手の凄さを早くも痛感した。

 その後は足裏で止めずに蹴ることになり、更に悪戦苦闘。ボールが明後日の方向に飛んでコントロール不能に。テレビで試合を観ていると「ノートラップで――」などとよく耳にするが、それがどれだけ難しいことなのか身を以て思い知らされた。

 

 

体力について考える

 パス回しの後、休憩を挟んで10分のミニゲーム開始。

 パス回しの時点ですでにバテていた私は「!?」となったが、職場の同僚が「女性は前のポジションにいれば良いですよ」と言ってくれたので、とりあえず私はジュニオール・バホス(ヴァンフォーレ甲府のCF)になろうとした。足遅いけど。

 笛が鳴り、相手ボールで試合開始。私は言われたとおりに前線に突っ立っていればいいものを、張り切ってしまって攻守に全力疾走する。その結果、3分でバテた。カンカン照りの太陽の下、試合中にもかかわらず膝に手をつく。息が上がってしまって、呼吸を整えることすらままならない。そして前線にボールが来れば、また一瞬で全力疾走しなければならない。これはキツすぎる。

 こちらのチームが守備に回る場面では、キツすぎて自陣に戻る気力すら起きない。プロの試合の終盤に「走れ!」などと言っている観客がいるが、私から言わせてもらえば「無理!」。いくらプロは毎日練習して鍛えているとはいえ、あの広いピッチを90分間走り続けている。体力的にキツい中で自分の体に鞭打って頑張っているのだ。それを理解しなければならない。

 さらにはペース配分も重要だ。私のように最初攻守に渡って全力でプレーして、数分で使い物にならなくなったのでは話にならない。自分のポジション・役割を理解して、それを遂行するためにある程度は力を温存しておかなくてはならない。プロはそれも頭に入れてプレーしている。賢くなければ出来ないことだ。

 バテバテの状態の私の耳に、時間を測っている人の声が届く。「あと5分です!」。

 

 

決定機を迎えた時のメンタル

 あとの時間は何とか運動量を少なくしようと、ゴール前の電柱になることを決めた私。背低いけど。

 ゴール前で張っていた私にズバッと鋭いボールが入り、そのままシュート!……と思いきや、見事に空振り。ボールを供給して「惜しい!」と言ってくれた人に対し、私は思わずこの言葉を言ってしまった。

 

「急にボールが来たので……」

 

 でもゴール前となるとどうしても体に力が入ってしまう。「決めなきゃ!」と思うだけで、不思議なくらい全然体が動かない。シュートを大きくふかすことを「宇宙開発」なんて言うが、ふかさない方が何千倍も難しい。その状況下で、しかもほんの一瞬の判断で正確にゴールを決めることがどれだけ大変なことなのか強く思い知らされた。

 

 

暑さはもう一人の敵

 その日は35度近くまで気温が上がっていた。いくらJリーグの夏の試合は夜に行われるとはいえ、暑さは体力も思考・判断力もどんどん奪っていく。私だけでなく周りのプレイヤーも時間を重ねるごとにパスミスは多くなっていくし、あと一歩が出ない時も増えていく。「選手達はこんな状態でプレーしているのか……」と思うと、ミスなんて絶対に責められないとつくづく感じた。

 

 

頭と体を連動させる難しさ

 練習終了後、同僚に「リセルさんサッカーに詳しいから、攻撃の時のポジショニングがすごく良かったですよ」と言われた。しかし自分の中では決定機を全て外したし、全然走れなくて最終的にゴール前の電柱というか地蔵になっていたし、自分のしたかったことの5%も出来なかった。

 いくら試合で良いシーンを観ていても、実際に自分の体でそれを表現するとなるとものすごく難しい。頭で分かっていることを表現させるための技術力、技術力を的確に発揮する一瞬の判断力、判断力を保たせる体力、体力が厳しくてもそれを補う気力。様々な要素がトップレベルになってようやく頭と体が連動するのだ。

 ちなみに終始ダメダメな私だったが、一つだけ良いプレーが出来た。左サイドでボールを持った私を、味方が背後から追い越したので一瞬の判断で味方にヒールパスを出すことが出来たのだ。直後、味方から「ナイス!」の声。その瞬間はすごく嬉しかったし、気持ち良かった。

 

 

まとめ

 ダメダメな私だったが、フットサルを通して選手達の気持ちを体感できた。むしろダメダメだったからこそ、選手達の技術力の高さやメンタルの強さを知ることができたのかもしれない。フットサル自体もすごく楽しかったので、早くも次の練習日が楽しみになっている。

 その日の夜、ヴァンフォーレ甲府とアビスパ福岡の試合をDAZNで観た。結果は追いつかれての引き分けだったが、フットサルで違った角度からより鮮明に選手達の凄さを知れたので、悔しさももちろんあるが選手達を称えたい気持ちの方が勝った。

 選手達に「走れ!」「決めろ!」と言いたい気持ちも分かる。しかし、選手達は自分の限界を突破する勢いで走り回り、ゴール前では決定機を迎え力むのも致し方ないギリギリの状態でシュートを打つ。しかもそれを毎試合行っているのだ。私達サポーターが同じ状況でプレーすることは出来ない。しかしその極限状態を少しでも想像してみよう。そうすれば応援の姿勢も少しは変わってくるはずだ。

 今回の経験は、私にサッカーを前向きに応援する力をくれた。これからもポジティブに愛するチームを応援していきたい。そして、プレーする側としても楽しんでいきたい。

Writer:リセル

ヴァンフォーレ甲府とミサンガ作りと文章を書くことが好きな自由人。「Jサポライター部」、Jリーグのハンドメイド作品が集まるサイト「Jサポハンドメイド部」、両サイトの管理人をやっています。まだまだJサポ歴が浅いので、Jリーグのことをもっと知りたいです。