サポーターの上下関係 ~強いクラブと弱いクラブの優越感と劣等感~

2018/10/17 Writer:リセル

強いクラブのサポーターが威張り、弱いクラブのサポーターが萎縮する。それは日本のサッカー界の魅力の低下につながる。

Twitterでは時折、違うクラブのサポーター同士が揉めることがある。言い合いをしていてだんだん感情的になってしまうと稀に「J2のくせに」、「残留争いしているくせに」という文言を発してしまうサポーターもいる。

カテゴリー・順位・クラブ規模が上のクラブのサポーターが、下のクラブのサポーターを見下す。自分自身がプレーしている訳でもなく、相手を見下せるほどの何かしらの強さがある訳でもなく、ただ上のクラブを応援しているというだけで、下のクラブのサポーターに強く出る。そういった、言ってしまえば「勘違い」は往々にしてある。

その勘違いには、ほとんどのサポーターが感じるであろう「優越感」が関係している。カテゴリーや順位が対戦相手より上であるとか、スタジアムに駆けつけるサポーターの人数が相手より多いとか、またはその日の試合に勝つと、どのクラブのサポーターでも何となく優越感を感じる。これを心の内に秘めているだけなら私は否定も批判もしない。その優越感はごく自然なことだからだ。しかし、その優越感も度が過ぎると「自分が応援しているクラブは強い=上のクラブを応援している自分は強い」という勘違いになる。相手へのリスペクトの気持ちもその時点で消えてしまう。

私は日本のサッカーの魅力の一つは、サポーター同士のリスペクトの気持ちだと考えている。試合中は全力でバチバチと戦い、たまにブーイングも飛ぶだろうが、試合以外では対戦相手のサポーターが「ようこそ!」ともてなしたり、「良い試合にしましょう!」とお互いの健闘を誓う。もちろん同県クラブ同士などのダービーマッチではそうもいかないだろう。しかし、他のクラブとの試合ならサポーター全員が全員敵意むき出しということは無いはずだ。

度を超した優越感から生まれる勘違いはリスペクトの気持ちを無くし、日本サッカー界の魅力を低下させる。そしてまた、逆も然りで下のクラブの劣等感も問題だ。「○○(対戦相手)さんはやっぱり強いですね」という相手クラブへのリスペクトは良いが、「それに比べてウチは全然駄目」と卑下してしまっては、それこそ自分のクラブを否定することになってしまう。

下のクラブのサポーターの中にはビッグクラブへの憧れを持つ人もいる。私自身、「甲府は甘い!人数が少なくて応援もぬるい。ビッグクラブのように負けたら大ブーイングしないと駄目だ!」というネット上での甲府サポの発言を目にしたことがある。ビッグクラブの圧倒的な応援に憧れる気持ちは分かるが、甲府には甲府なりの良さがある。その地域の人口や風土でビッグクラブには到底敵わない、致し方無い部分もある。それを「甘い」「ぬるい」と否定してはいけない。サポーター人口の少ないクラブなら、「みんなでこのクラブを盛り上げていこうよ!」というサポーターの当事者意識はビッグクラブよりも強いのではないだろうか。それはサポーターとして胸を張って誇るべきことだ。

上のクラブがカテゴリーや順位が常に上でいられる保証はない。今は上でも、いつ下がるかも分からない。下のクラブもまた同じだ。何より上のクラブのサポーターも下のクラブのサポーターも、「サッカークラブを愛する者」という同志である。そこに上下関係は存在しないし、存在してはいけない。

同じ「サポーター」として、お互いをリスペクトしていく。そうすれば日本サッカー界はより盛り上がっていくはずだ。

Writer:リセル

ヴァンフォーレ甲府とミサンガ作りと文章を書くことが好きな自由人。「Jサポライター部」、Jリーグのハンドメイド作品が集まるサイト「Jサポハンドメイド部」、両サイトの管理人をやっています。まだまだJサポ歴が浅いので、Jリーグのことをもっと知りたいです。